【イベントレポート】有松絞り x セルフマネジメントワークショップ 2023 第2部:参加者の体験・声

日本遺産:有松(愛知県)で開催した2日間のワークショップには、総勢18名(大人14名・子供4名)の方々にご参加いただきました。Transformでお伝えしているセルフマネジメントを、日本の伝統工芸「有松絞り」を通して実際に体験するという、特別な2日間でした。

今回の第2部では、実際に行った体験内容を参加者の目線からご紹介します。

*第1部はこちらからご覧いただけます

体験セッションDay1

有松駅を降りて数分で、江戸時代の浮世絵さながらの景観が今も静かに広がる街並みが見えてきました。8月中旬で非常に暑い中ではありましたが、古い商家の軒先の藍で染められた絞り暖簾が風にゆられる姿が涼しげでした。

今回ワークショップの会場になったのは「しぼりの宿 MADO」。伝統のある古民家を改装した部屋の天井には美しい有松絞りが敷き詰められ、私たちを出迎えてくれました。

藤井ショウジさんによる有松絞りのお話し

400年以上続く日本の伝統工芸、有松絞り。その新たな可能性と魅力を見出し現代に蘇らせるアーティストとして活躍されている藤井ショウジさんより、技法や実例、素敵な作品を紹介して頂きました。さらに、有松絞りの広がりと歴史を、「あないびと」と呼ばれる有松の街ガイドの方々に昔ながらの紙芝居で紹介いただき、この場所が江戸時代から変わらず生き続けていることを感じました。

藤井ショウジさん
あないびとの紙芝居
あないびとの皆さんによる街歩きの時間

いよいよ有松絞りを実際に体験します

基本的な手法の説明の後は、いよいよ自分たちが実際に手を動かして体験する時間です。

昨年も参加されていた方とその娘さん(小学校3年生)の「早くやりたい!染めたい!」という勢いに影響され、他の方々も一気に創作に集中しはじめ、会場のエネルギーがシフトしました。

まず、楽しむ

今回のプログラムに参加した皆様から頂いた言葉は「とにかく楽しかった!」でした。最初の1枚目に関しては、「うーん、どうやったらあの模様ができるのか・・・」と考え込んだり、手が進まない方もいましたが、2枚、3枚と創作が進むにつれてエネルギーに溢れ、普段の自分の枠から出て様々なやり方を試しているような印象を受けました。

無意識の自分の枠に気づく

「自分の認識がかなり偏っていて、さらに自分の中でなんとかやろうとして助けを求めるのも周りから学ぶのも下手だということに気づいた。それでも、めちゃくちゃ楽しかった。かつ、自身の体験や周りの参加者の方を観察していて色々発見があったので、もっと余白や遊びを持っていいんだなと思えた。」

参加者の中には、このような気づきがあった方もいらっしゃいました。

竹田庄九郎の後裔、竹田家でのプレミアムな体験

さらに、江戸時代から続く有松絞りの開祖、竹田庄九郎の後裔 竹田家ご当主に、文化財でもある邸宅を案内していただきました。

邸宅には有松絞りの反物や小物類が数多く並び、それらを直近でみる機会もありました。直前まで創作体験をしていたことで、そこに並ぶ作品の素晴らしさや技法の凄さをより感じることができました。

名古屋市指定有形文化財 竹田邸
特別にお茶も振る舞っていただくとともに、貴重な茶室へも入らせていただきました

体験セッションDay2

開始時間より前に来て創作を始めるかたも。2日目は初日に体験した基礎的な技法に加え、さまざまな道具を使って染める方法をショウジさんに教えていただきました。

テーマは「瞬間」

2日目は朝イチでテーマ「瞬間」を設定し、意図を持ちながら各々が創作にあたりました。

午後には自分の作品についての意図やストーリーを全員の前で発表し、

言葉ではなく形にすることでそれぞれが考える「瞬間」が表現されるとともに、参加者一人一人の視点の違いやその背景が引き出されました。

想定外の作品ができたとき、イメージとは違うものができたとき、「その結果がなぜ起きたのか?」をクリアにして次の創作へと繋げていく。実生活で無意識に・意識的にやっている

学びのプロセスを、創作を通じて行っていきます。

参加者からは、書籍「ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室」でも紹介している「IRマップ(Intention Result Map)(P163~)が役に立った」という声もありました。

参加者が表現した「瞬間」を部屋の真ん中に並べ、2日間の集大成を共有しあいました。

一人一人の発表に対し、ショウジさんが丁寧にフィードバックしてくれました。

思い描いた「意図」を表現できたという方もいれば、完成品を見たあとに、「瞬間」に対する自分のストーリーが変わったという方も。

ジェレミー:

「もしこのプログラムをアメリカでやろうとしても、この環境は作り出せないと思います。有松という土地で、さらにこの歴史的な建物の中でワークショップを行うことが、体験をさらにパワフルにしていると思います。」

ショウジさん:

「皆さん異なったアプローチで深めているので、真似できないものがありますね。私も初めて見る現象もあります。

絞りというものは必ず染めた結果があって、それには常に予想外な部分がある。自分がこうしたからこうなった、しかもそれが自分の想定を超えていた。その発見を汲み取り、そこからさらに違うものに生かしていく。

その繰り返しが、その人だけのオリジナルの技法を作り上げます。

これは染めることだけにとどまらず、日々の意識の向け方に応用することで、自分の見えている世界が変わってくるのではないでしょうか。」


参加者の声

Q. どのような発見や気づきがありましたか?ワークショップの前後で何か変化はありましたか?(意識の向け先や身体感覚に何か変化はありますか?)

◆大きく2つあります。ひとつは、今この瞬間を感覚としてとらえるということと、事象に対して探求する(頭を使う)こと、実際に身体を動かし変化を生み出すこと。この一連のプロセスとひとつひとつの重要性をヒシヒシと感じた2日間でした。

◆自分の認識がかなり偏っている!?ことに気付いたこと。自分の中でなんとかやろうとして、助けを求めるのも周りから学ぶのも下手。。それでも、めちゃくちゃ楽しかった、かつ、色々発見があったので、もっと余白というか、遊びを持っていいんだなと思えたこと。


Q. その発見や気づきがどう日常に活かせそうですか?

◆人と関わることで浮かび上がってくる自分の個性やモノの見方を大事にしたいなと思います。また人との違いを楽しもうと思いました。アートと同じで個性の違いに良いも悪いもないので。

◆皆さんの作品発表を聞きながら、自分がいかに感性重視なのか認識し、模すという行為によって匠の技を学ぶ姿勢も大切にしようと思いました。 ショウジさんのようにチームメンバーの個性を尊重し、話を聞き、褒めて調和を生み出すスタイルは私が仕事だけでなく子育てやプライベートで心掛けている姿勢と通じるものがあり、この道を邁進して良いのだとも感じました。


Q. 一番インパクトがあったことは何ですか?

◆ただただ黙々と心のまま(息子の要求通り)に作品を作っていくというプロセスが本当に楽しかったということ。そして、最後に一人で作品を作ろうとした時に、変に力みと欲にまみれてしまい、全然楽しむことができなかったこと(笑)この経験がすごく私にとっていい教訓を得る機会となったなと思いました。

◆参加者の皆さんの多様性な作品を通して感じたこと。普段私たちは言葉や見かけで多様性を感じることが多いけど、クリエイションから感じる多様性は、とても居心地がよく幸せな気分になりました。