【イベントレポート】Transform スペシャル セッション: Widening Your Green Zone 〜グリーンゾーンを広げる〜

2024年3月、ジェレミー・ハンターの来日に合わせて対面のスペシャルセッションを開催しました。
今回は「Widening Your Green Zone 〜グリーンゾーンを広げる〜」というタイトルの元、今までのプログラムで体験したものとは全く異なるやり方でグリーンゾーンを広げる内容です。
参加者の皆さんが実際にどのような体験をされているのかよりビビットにお伝えするため、今回はライターの佐々智佳子さんに依頼しセッションの体験レポートを書いていただきました。

***************************************

去る2024年3月13日、恵比寿のEIJI PRESS Baseにて、Transform共同代表であるジェレミー・ハンター氏による待望の対面セッションが開催された。

聞く者を強く惹きつけるジェレミーさんの話ぶりは、内容の奥深さもさることながら、茶目っ気たっぷりなアメリカンジョーク満載でとにかく楽しい。筆者同様、そんなジェレミーさんの来日を心待ちにしていた方は多かったのではないだろうか。

セッションのテーマは「グリーンゾーンを広げる」
これまでとはまったく違う方法に基づいてグリーンゾーンへアプローチをかけていった本セッションは、「対面だからこそできること」を重視した内容だった。メインは、夜の恵比寿の街を散策しながらの野外アクティビティ。そのほかにもいくつかのワークやジェレミーさんとの対話、そして参加者同士のディスカッションを経て、セルフマネジメントへの理解を深める時間となった。


たった3時間のセッションを受けたら世界が変わった、と書いたら大げさに聞こえるかもしれない。けれども、筆者の世界は確実に居心地の良さが増した。

そもそも「グリーンゾーン」って?

人は困難に直面したとき、必ず下記三つのうちいずれかの反応(レジリエンスゾーン)を示すという。


ひとつは、「これは良い挑戦だ」と解釈し、力強く問題解決に挑もうとする姿勢。これは「グリーンゾーン」に身を置いた状態での判断だ。
やばい、不快でムカつく、イライラする」とストレス値を一気に上昇させてしまうのが「レッドゾーン」。
反して「こわい、無理」とフリーズしたり意気消沈し、なんとかやり過ごそうとするあまりに他人を拒絶し、自分の殻の中に閉じこもってしまうのが「ブラックゾーン」だ。


これらの反応は誰にでも起こることでもあるし、他の人との関係性の中で起きることでもある、とジェレミーさんは説明している。グリーンゾーンにいると、他者と協同しやすい。レッドゾーンにいると、他者は敵と見なされがちになる。そして、ブラックゾーンに落ちてしまうと、他人との関わり合いに興味を失ってしまう傾向にあるそうだ。


また、これらはすべて生理学的なもので、神経体系がつくり出す生存に不可欠なメカニズムである。大事なことは、どの反応を示しているかによって、あなたの世界の解釈の仕方も変わってくるということ。あなたに何が起こっているのかではなく、あなたの内側で何が起こっているのかが、あなたの世界をやさしいもの、険しいもの、寂しいものたらしめているのだ。

*より詳しくレジリエンスゾーンについて知りたい方はこちらのブログをご覧ください
『自分の状態を知るためのシンプルなツール 「レジリエンスゾーン」』

コロナ禍で学んだこと

レッドゾーンとブラックゾーンにいること自体、決して悪いことではない。ただし、これらのゾーンに居続けることはあなたの人生においての選択肢を狭めてしまう、とジェレミーさんは話す。例えば、サバイバルモード(レッドゾーン)に身を置いていると「戦う(fight)」か「逃げる(flight)」かの選択肢しか見えなくなってしまうからだ。


グリーンゾーンにいれば、「戦う(fight)」か「逃げる(flight)」か以外の選択肢も視野に入りやすい。選択肢が多ければ多いほど、自分自身に対処しやすくなる…すなわち、セルフマネジメントしやすくなるのだ。

グリーンゾーンにいるってどんなかんじ?

今夜の目的はより多くの時間をグリーンゾーン内で過ごせるよう、自分のキャパシティを広げていくこと。そこで、セッションではまず「グラウンディング」を行った。


グラウンディングは、普段無意識であることが多い自分の状態に意識を向けるエクササイズだ。自分に起きる反応に意識を向けつつ、地面と足の接地面、椅子と太ももなどの接地面に意識を向けて「いま、この瞬間」の自分の状態に気づいていく。


グラウンディングはいつでも、どこでもできるのがメリットで、ジェレミーさんは電車に乗りながら、散歩しながらなど、「ながら」グラウンディングの実践者でもあるそうだ。


さらに、グラウンディングに追随して行ったのが「リソーシング」というエクササイズだ。リソースとは、気分をよくしてくれたり、自分を支えてくれていると感じさせてくれたり、愛されていると感じさせてくれるものすべて。それはたとえば親愛なる人・ペット・音楽・好きな場所・ポジティブな経験など、自分の外側にあるリソースであったり、信念・価値観・経験・資質など、自分の内側にあるリソースであったりする。


グラウンディングとリソーシングを通じてグリーンゾーンに近づけたと報告した参加者が多かった。また、グリーンゾーンにいるときの心地よい感覚は、参加者によって多種多様だった。
このあと、舞台はいよいよ恵比寿の街へと展開していく。

自分のグリーンゾーンをどこまで広げられるか

平日の午後8時をまわった恵比寿駅周辺は、人の波でごったがえしていた。
そんな夜の街へと繰り出したジェレミーさん、Transformメンバーと、スペシャルセッション参加メンバーたちは、スマートフォンのZoomアプリを経由してやりとりをしながら、ある実験を行なった。


それは、街中で見ず知らずの誰かに意識を向け、他人のストーリーを感じ取り、ひそかにエールを送って、その人の姿が雑踏の中へ消えていくと同時にそれらすべてを手放す、という体験の繰り返しだった。
この一風変わった「実験」は、参加者にはどのような変化をもたらしたのだろうか。

意識の向け方が世界を変える

たとえば、Transform共同代表・稲墻聡一郎さんは、「自分の意識の向け方が、自分の体験をつくっている」ことを実感できたと話してくれた。
「寒さに意識を向けてしまうと、自分の体験は増幅されてより寒くなる。一方で、人に向けてあたたかい気持ちを送り続けることで自分の体験もよりあたたかくなる」と感じたそうだ。


筆者の場合は、道行く人々に「あなたの好きな人と幸せになれますように」と念を送っていた。すると、他人にあたたかいエールを送っていたつもりだったのが、かえって自分自身の孤独が際立って感じられた。自分にもあたたかいエールを送ってくれる人がいたらいいのにな、などと考えて、ちょっと寂しい気持ちになった。
屋外での実験を終え、あたたかいミーティングルームへ戻ってきてから、しばらくジェレミーさんのディレクションに沿って今夜の体験を言語化する機会を得た。そのとき、はたと気がついたのだ。孤独と自我は同一線上にあるということを。


意識の向け方によって、自分の置かれた場所は寂しくも、また豊かにもなりうる。自分があくまで傍観者として道行く人々に一方的にエールを送っているだけでは、自分を豊かにはできない。しかし、自分がその時、その場所にいた人たちと同じ世界の中に内包されていると捉えることができたとしたら、あたたかいエールはすなわち自分自身をも包みこむことになる。相手への応援は、自分の応援にもつながるのだ。

幸せの領域を広げる

グリーンな状態にいる人は、まわりの人をより良い状態へと誘導しやすいと知った夜だった。
そして、より多くの時間をグリーンゾーン内で過ごせるように自分のキャパシティを広げていくことは、人生において非常に重要なスキルだと実感できた。


一夜かぎりのスペシャルセッションに集った参加者の面持ちからも、グリーンゾーンがいかに伝染しやすいかがお分かりいただけると思う。「グリーンな人」が増えれば、世界はもっと楽しくなる。


(写真・文:佐々智佳子)