【イベントレポート】Transformスペシャル セッション: Self-Management & Retreat @ 湯河原リトリートご縁の杜 〜 見えないつながりを体験する 〜

2024年3月、ジェレミー・ハンターの来日に合わせて湯河原にてリトリートプログラムを開催しました。
今回はサウンドセラピストHIKOさんによる「サウンドバス体験」、そしてトランスフォーム認定ファシリテーターでもあり、腸活を主軸に活動されている中島規之さんによる「腸活とセルフマネジメント」の体験を通してグリーンゾーンを広げていきました。
参加者の皆さんが実際にどのような体験をされているのかよりビビッドにお伝えするため、今回はライターの佐々智佳子さんに依頼しセッションの体験レポートを書いていただきました。
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「リトリート(retreat)」──── 静養所、隠居所などと訳される言葉だが、動詞だと後退、または退却する意味も持つ。しばし日常から身を引いて、距離感を以て現在の自分の置かれた状況や内面を静観することで、自分の内なるエネルギーを補うことが期待できる。

セルフマネジメントを主軸としたコンサルティングを行うTransformメンバーも、それぞれのグリーンゾーンを広げるべく、時折リトリートを催している。

リトリートに湯河原はうってつけだ。海が近く、空が広い。おおらかな自然環境にいだかれて、時間がふわりと香り立つように過ぎていく。

ひときわ「湯河原リトリート ご縁の杜」は、温泉まちの風情と現代的なしつらえが相乗効果をなし、素の自分に還るにふさわしい場所だ。

このご縁の杜にて2024年3月のある土曜日に行われたTransformのリトリートセッションでは、「目に見えないもの」の「つながり」というテーマが扱われた。

おもにジェレミー・ハンターさんによるディスカッション、HIKO KONAMIさんによるサウンドセラピー、そして中島規之さんによる腸活セミナーを経て、体全体を使って体験することの心地よさと、その体験をお互いに共有することの大切さを学んだ。

自己紹介でつながる

はじめましての参加者もいたので、まずは自己紹介タイム。

その中で、ジェレミーさんは「Transformをゼロから立ち上げた理由に、こうして人々が集まる機会を創出し、一緒に楽しみながら ”人間であることとはどういうことか?” を学んでいくということがあった」と説明。

また、稲墻聡一郎さんはTransformの根幹をなす「theory of change(変化を起こす理論)」について言及した。神経系のマネジメントをベースに、グリーンゾーンの中に身を置く。すると、グリーンゾーンの中にいる人はまわりの人のグリーンゾーンを広げていくこともできるので、グリーンな領域がどんどん拡大していく。今回のリトリートも、そんな試みのひとつだ。

音でつながる

今回のリトリートでは、サウンドセラピストのHIKO KONAMIさんによる「サウンドバス(sound bath)」を体験する機会が二度提供された。

サウンドバスとは、文字どおり「音浴」────音を聴くのではなく、浴びることを意味する。

音は空気の振動の広がりだ。耳で聞きとっているのは可聴域の範囲に含まれる周波数を持つ音のみで、それ以外の空気の振動は体全体に伝わってきている。しかし、現代においてとかく多用されがちなヘッドホンやイヤホンは耳に聞こえる音しか再生しないので、体全体で「生音」を受けとるのとはまったく異なる体験なのだとHIKOさんは説明してくれた。

そんなHIKOさんがつくり出す生音は、オルガンだったり、ふしぎな木の実だったり、倍音を奏でるシンギングボウルだったりを交互に演奏しながら即興で組み合わせていく、再現不可能な唯一無二のハーモニー。

参加者は目を閉じ、思い思いのスタイルで床に全身をあずけながら、HIKOさんの生音をシャワーのように浴びた。

雨粒がひっきりなしに屋根をたたいていた。その雨音に調和するかのように、心地よさを意図して贈られてくるHIKOさんの即興演奏。音の中で泳いでいるような…、無重力空間をたゆたっているような…。

音が聞こえるのではなく、体の隅々まで染み入ってくるような感覚を味わった。うれしさ、ありがたさが胸にこみ上げてきて、おもわず口角が上がった。

生きているといろんな体験をする。生きていてよかった、そう思えた。

食でつながる

快いサウンドバスの余韻を感じつつ、ランチタイムを挟んでの休憩となった。

ご縁の杜特製のビーガンランチをありがたくいただいたあとは、Transform認定ファシリテーターのお一人である今泉千春さん、そしてTransformチームメンバーの園田恭子さんがそれぞれ淹れてくださった香り高い中国茶を堪能した。

休憩後に行われたジェレミーさんとHIKOさんとのディスカッションで印象深かったのは「境界線の不在」というテーマだ。

HIKOさんのサウンドバスを体験した参加者のなかには「自分と自分以外の世界との境界線があやふやになった」と感じた方がいらっしゃったのだが、これはまさに自分と自分のまわりにいる人々、また自分が置かれている環境と共鳴していることを意味するのだとHIKOさんは指摘。

また、「”私” と ”世界” というはっきりとした境界線は実は存在しない」と説明してくれた。その境界線がないと気づくことができれば、「みんな一緒だし、孤独もないし、攻撃する必要もないし、対立する必要も、比べる必要もない」とも。このことを頭でではなく、感覚的に掴みやすいのがサウンドバスなのだそうだ。

さらに、この「境界線の不在」は、わたしたちの体の中に関しても言えることではないか、とジェレミーさんは話した。なぜなら、わたしたちの体内に無数に存在する腸内細菌(腸内フローラとも)と、わたしたちの体との境界線はどこにあるのだろう?どこまでがわたしたちの体で、どこからが共存者の体なのだろう?

腸活でつながる

その問いに対して深い考察を提供してくれたのが、「なかじ」さん、こと中島規之さん。

ご自身の闘病生活をきっかけに腸活に興味を持つようになり、今では美容健康のための腸活をサポートするウンログ社の運営と、NTTドコモでの事業作りに携わっているそうだ。

なかじさんのお話に登場したいくつかのキーワードのうち、「脳腸相関」は特に興味深かった。いわく、脳と腸は自律神経のひとつである「迷走神経」によって直接つながっており、コミュニケーションを取り合っている。そして、そのコミュニケーションは均等ではない。脳から腸への指令が主なのかと思いきや、実は最近の科学的エビデンスが示す実態はその逆。腸から脳へ送られる電気信号のほうが多いのだそうだ。

さらに驚くべきことに、腸には感情があるそうだ。そしてその感情が脳に与える影響は大きい。だからこそ、腸に意識を向けることは、自分の今の状態を知る重要な手がかりとなる。その手がかりは自分の選択肢を広げ、行動を変え、その先の結果さえも変えることができる重要な気づきなのだ、となかじさんは話してくださった。

腸活は、すなわちセルフマネジメントの大事なツールなのだ。

腸の状態に気づくために、腸に直接触ってみるワークも行った。そのほか腸活に大事なことはうんちを見ること、食事にプレバイオティクス(腸内細菌のエサ)を取り入れること、そしてお腹と背中を温めることだと学んだ。

自分の体の中で、目には見えない腸内細菌がこんなにも豊かな、そして繊細な世界を作り上げていることを知り感銘を受けた。わたしたちは、腸内に住んでいる無数の菌たちのおかげで命をつなげることができている。

ふたたび音でつながる

腸内環境を整えた後は、HIKOさんのリードにより声を出し合うセッションも行った。
自分の声がまわりの人々の声と溶け合い、共鳴していく感動的な体験だった。

一日の終わり、そしてそれぞれの居場所へ

土曜日のほぼ一日を共に過ごした参加者たちが最後に行ったディスカッションは、お互いへのあたたかい感謝の気持ちで充満していた。リトリートを通じて、それぞれのグリーンゾーンが広がり、それぞれの内なるエネルギーが補填された証なのだと思う。

帰りの電車の窓越しに迫る海が、いつもよりおだやかに見えた。

(写真・文:佐々智佳子)