参加企業インタビュー:株式会社 TO NINE
社員の成長と会社の成長とを結びつける
〜 セルフマネジメントプログラムを導入して実感したメリット 〜
株式会社 TO NINE 共同代表取締役 吉岡芳明さん
Transformのセルフマネジメントプログラムを企業に導入することは、社員にどのような変容を促し、企業の営みそのものにどのような影響を与えるのでしょうか。
株式会社TO NINEの共同代表取締役を務める吉岡芳明さんは、Step1(セルフマネジメント&リーダーシップ)とStep2(反応的な感情のマネジメント)のプログラムをおよそ1年間にわたって社員全員で受講した経験は、チームのパフォーマンス向上につながり、ひいては顧客満足度を高めるという成果に結びついたと確信しています。
以下、Transform共同経営者・稲墻聡一郎との対談を経て、TO NINEがどのようにセルフマネジメントに取り組んできたのかをお伝えします。
目次
九人九色
Transform 稲墻聡一郎(以下稲墻):会社名の “TO NINE”とは?
TO NINE 吉岡芳明(以下吉岡):いくつか意味があるんですが、メンバーそれぞれが自立している組織を作りたいと思っていて、個性豊かな人数が集まるっていう意味で、シングルナンバーの最上位である9ぐらいがちょうどいいのかなと。それでTO NINEなんです。
もともと僕と共同代表の増田智士はふたりとも同じ会社でマネジメントをやっていたんですが、自分たちはマネジメントに向いていないなと思っていて。それで、マネジメントをするのではなく、みんなが自立した組織を作りたいと思ったんですね。
僕らがずっとトップにいて、ずっと会社を引っ張るというよりは、これだけ変化が早い時代においていろんなメンバーに顔になってほしい。個性豊かなメンバーが9人集まれば、会社は沈まないし、みんなが自立した組織になるし、良い規模感かなと。そういう会社のイメージです。
稲墻:なるほど、おもしろい。どんな仕事をやっているのでしょう?
吉岡:ふたつ事業があって、ひとつはブランディングコンサルティング。ブランディングって定義がいろいろあると思うんですけど、マーケティングはお客様の行動を変容するための施策であるのに対して、ブランディングはお客様の認識を変えるための施策であると捉えているので、定量的よりは定性的なものや、感覚的なものを取り扱うコンサルティングが多いですね。ビジュアルだけではなくて、その会社の企業文化だったり、マーケティングに繋がる前段階の「自分たちは何を実現したいのか」というWillの確認をしたり。一番多いのは顧客調査です。
“Less is More”という考え方
吉岡:もうひとつ、自分たちでSENNというブランドをやっているのがうちの会社のオリジナリティです。心と体をケアするスキンケアや、お香や、そういうアイテムを展開するブランドの運営をしています。
もともと自分たちでブランドをやりたいっていうのが会社を立ち上げたきっかけだったんですよ。SENNというブランドは、「Less is Beauty」というコンセプトをひらめいたところから始まりました。
自分たちみたいな小さな会社が大企業と戦うためには、なにかを絞らなきゃいけない。でも、絞ることって別に弱いことではなくて、実は価値があることだし、絞ることによって見えてくる世界がある。それってLess is More(少ないことは豊かなこと)だね、という考えを持っていたので、そのLess is Moreにちなんだブランドを作ろうと、商材を探しました。
稲墻:コンセプトから始まったんですね。
吉岡:そうなんです、コンセプトありきで動いていて。それこそ洋服とか、フードとか、食器とか、いろんなことを検討しましたけど、その中でもLess is Moreが一番刺さりやすい業界が美容だったんですね。
美容業界では、今人口が減ってきているからこそ、一人により多くを与えないと会社がうまくいかないという状況になってきている。多くなればなるほど美容が良くなればいいんですけど、それはオーバーケアといって、むしろ肌にとっては悪いことであると美容の専門家に聞いたんです。減らすことが実は肌にとって良いことであるならば、と始めたのがSENNでした。
僕らがやりたい美容は、鏡を通して自分と向き合うこと。スキンケアを通じて自分にアウェアネスを向けてもらいたいし、自分をちゃんと触って手当てをしてほしい。自分を大切にすれば、いくつになってもその日、その時の自分が一番好きと思えるので、それがウェルエイジングにもつながると思っています。
稲墻:TransformもLess is Moreを大事にしています。多くやると、それだけ複雑になるから。1回のセッションで伝えるコンテンツをふたつぐらいにして、基本をシンプルに伝え続けることを大事にしています。
吉岡:いいですね。減らすと向き合える。
稲墻:そうですね。スペースができるから。
吉岡:そういう向き合うことが、これから贅沢になるという感覚はあります。あまりにもアウェアネスが外にばっかり向いてしまって、自分と向き合えないから。Less is Moreは貧しいことではなくて、まさに豊かなことだっていうのは感覚としてあるし、世の中がそうなるだろうなっていう見通しも持っていましたね。
あるもの伸ばし
吉岡:ブランディングコンサルティング事業でも、外から答えを持っていくのではなく、内側に答えを見出そうとしています。矢印を外に向けちゃうと「あれもこれも」ってなるので、ないものねだりではなくて、あるもの伸ばしをしてほしいなと。
あと、あるもの伸ばしという意味では、うちの会社では自分の人生を語るっていうことを2年ぐらい前からやってまして。しゃべりたい社員に、自分の人生のハイライト3つを語ってもらうんです。それをポッドキャスト化して、社員みんなが聞くようにしています。やっぱり言葉にして発信してほしいし、語ることで自分の人生にストーリーが生まれるんですよね。
そのポッドキャストの内容を経営メンバーが聞くことによって、社員がやりたいことをより深く理解できるのでマネジメントしやすくなりますし。写真を撮ったり、動画を作ったりするのが上手い子がいたら、じゃあこういう仕事を取ってこよう、みたいな感じで、社員の特性によって会社の進む方向性が変わってきています。
やりたいことは、メンバーの成長と会社の成長とを結びつけること。9人ぐらいの規模だと、それができます。みんながやりたいことの方向へ会社が向かっていれば、強いですよね。
稲墻:それは素敵ですね。これができている組織って本当に稀だし、柔軟だと思います。。人と特性とケイパビリティありきですね。
ブリコラージュ型の組織
吉岡:そうですね。ブリコラージュ型の組織にしたいなとは思っていますね。レシピから料理を作るエンジニアリング型がある一方で、ブリコラージュ型は今ある材料から料理を作る。「カレーを作ろう」と思うんじゃなくて、「人参とジャガイモと玉ねぎがあるから、じゃあカレーだな」みたいな。
そんなブリコラージュの考え方で組織を動かしたいと思っているので、そのために大事なのはやっぱり人に対する深い理解なんですね。メンバーを深く理解すると、良い仕事ができるので。
それと、社員にはなるべく長く会社にいてほしいんですよ。一人の社員が長くいればいるほど、うちの会社にとっては有利になると思っているので、そういう長い関係性を築くために必要なことはします。
その人だからこそのスキルがあるし、みんな代わりがいない人じゃないですか。一人の人の背景がわかることによって、この人にはこの人の人生があって、だからこういう特性なんだってことがわかり合えたら、チームとしての絆を深められるし、より長くいたいという気持ちになれるのかなと。
ここだったら私が私らしくいられるっていうことを理由に、長くいてほしいなと思いますよね、うちの会社に。
稲墻:いいですね。心がありますね。
吉岡:心がありますか?(笑)心ある社会を作るために心を失くしているんだけど。
稲墻:「サイコパス」って噂ですから。(笑)
セルフマネジメントを会社に導入するメリット
吉岡:いや、そうなんです(笑)。目的に対しての執着が強いので、やっぱり周りのみんなに負荷がかかっちゃうんですよね。
セルフマネジメントは自分を知り、そして自分を良い状態に置き、望む結果を出していくことを学ぶためのプログラムですけど、それを会社で導入すると、自分を知るプロセスがほかのみんなにも見えていて、それによって相手を知ることができるので、それによるわかり合いがすごく深まりますよね。
僕も自分を知っていくプロセスを会社のみんなに見せたので、それがよかったのかもしれないです。やっぱりマネジメントする立場の人だと、本音を隠すところはあるじゃないですか。本当は人としてはこう思うんだけど、でも会社としてはこう言わなきゃみたいな、ある種ダブルスタンダードみたいなところはどうしてもあるんですよね。
だから、セルフマネジメントのプログラムで自分の中身を社員の前で出すのはリスキーだなと思ったところもあったんですが、でもそれはもう出してみようと思って、あまり考えずに全部出していったんですよね。
そういうダサいところを見せることで、自分のマネジメント力が下がる可能性もあるのかと思っていました。けれども、逆だったのは驚きでした。わかり合うって部下から上司もあるんだな、という気づきがありました。
自分と向き合う
吉岡:うちの会社はブランディングをやっているし、SENNもやっていますけど、結局は自分と向き合いましょうっていうことを自分たちにも言うし、外に対しても言っています。
稲墻:「自分と向き合う」という軸がある。
吉岡:そう、軸ですね。なので、やっぱりセルフマネジメントのプログラムをマストで受けるべき会社なのかなと思います。会社の軸はそこなので。
吉岡:僕らテレワークなんですよ、基本的には。対面で仕事をしていないので、メンバーの状態がなかなかわからなかったんですよね。Transformのプログラムを受けてみて、そういうのがよりわかってきたので助かっています。
それと、僕と増田は全員と関わるんですけどメンバー同士によっては会わない人もいたので、対面で会う機会になりました。やっぱりそういうスペシャルな機会に自分を吐露するのって、とても良い体験ですよね。
稲墻:何人かの人は、会社に集まる良い機会になると言っていましたね。
吉岡:そうそう、リアルに会うきっかけになって。
稲墻:そうですよね。それと、Step 1のプログラムは、スタートアップ企業の株式会社メイキップと合同でやりましたね。2社で受けたほうが他者の視点が入るからいいかもしれないということで。
吉岡:そうです。Step 1の場合は、他社が入ることでみんな言いやすくなったと思います。やっぱり、プログラムを受けていると内面を出すことがあるじゃないですか。うちみたいに9人の会社だと、ちょっと言いにくい時もあって。その点、外部が入ることで話しやすくなったと思います。導入としては入りやすかったです。
稲墻:確かにそうでしたね。その後、Step 2の感情のマネジメントプログラムを続けて受けてくれましたね。
吉岡:はい、社員全員で受けました。ほかの勉強会とかだと業務が優先されちゃうこともあったんですけど、このプログラムは社員の参加率がとても高かったです。意外に自分を語らない社員が来てくれたりもしました。
みんなが参加してくれることが、まずは嬉しかったですね。抵抗感があるかなとも思ったんです。なんか距離が近いし、年齢差もあるし、そういうのは嫌かな、と。でもみんな参加してくれたし、みんな隠さずしゃべってくれました。
感情に自覚的になる成果
稲墻:Step 1とStep 2を受けてみて、どちらが効いたとかありますか?
吉岡:Step 2のほうじゃないですか。やっぱりチームで仕事をすると、反応を与え合うじゃないですか。そうなったときに、相手がどういうメカニズムで反応しているのかがわかるだけで、自分に対しての攻撃じゃないんだなっていうのがわかるんです。
稲墻:確かに。Step 2だと、リアクティビティマップ(感情と行動がつながるメカニズムを表すマップ)というフレームがありますね。
吉岡:そう、そのフレームから自分や相手に起きた事象を見ることで、感情という見えないものがちょっとずつ見えてくるんですよね。普通の会話で、何々にむかついた、何々がよかったとかって話しますけど、それだけだと全然わからなくて。なぜそれを不快と思ったか、快と思ったかっていうところまで掘り下げてみて初めて心のメカニズムが分かってくるので、ああ、だからなのかって腑に落ちるというか。
この人はこういう人なんだなあと特性がわかってくると、そこからの深め合いもできるようになってくるので、みんなで語り合うのが得意な組織になってきているんじゃないですかね。
稲墻:いや、ほんとにそうだと思います。組織の中の人に対してオープンに話をして、自分の思いをあそこまで共有できるっていうのは結構ないですよね。
吉岡:そうですよね。組織だから逆に抵抗感があるはずなのに、それでも自分を出せるっていうのはいいですね。それこそなんでも語れるような、心理的安全性の高い組織になれたらいいなと思います。
共通言語を獲得する
吉岡:あと、セルフマネジメントのプログラムを受けていく中で、社員同士で共通言語が欲しいなという思いがありました。
IRマップとか、グリーン・レッド・ブラックゾーンとか、そういう言葉を使って会話をしたいなという気持ちがありましたし、そうすることでみんなの自立した気持ちが生まれるんじゃないかなとも思います。
なにか目標に向かって進むための自立だけではなく、思いやりを持った自立も必要ですよね。テレワークだから、その場にいない人の状態を思いやって、たとえばレッドゾーンにいると感じたら、その気づきによって相手をカバーする、みたいなひとつの指標が出てくると良いなと思って。
受容性を高めたら、いがみ合いが消えた
吉岡:あとは、社員の中での関係性も変わりました。いがみ合っていた人たちがいがみ合わなくなって。
稲墻:それは大きいですね。
吉岡:そう、それは本当に。真面目な者同士がいがみ合っていたときもあったんですけど、それが別に相手をディスりたいわけじゃなくて、お互いに何か目的を果たすためにやっているんだっていうことがセルフマネジメントのプロセスを経て分かり合えて。わかり合いが深くなったからこそ、不和がなくなったというのがありますね。
稲墻:アテンションの向け先が違うだけなんですよね。
吉岡:そうなんですよ。別に攻撃じゃないんだって。で、そのアテンションっていうのはその人のバックボーンが作るものであって、誰のせいでもないんだ、みたいな。
稲墻:その人はそこに視点が向いているだけで、それぞれ自分の体験が違うだけなんじゃないかな。
吉岡:そうなんですよね。その人の後ろにあるストーリーがわかってくるし、あとは納得するというか、せっかちな人はただ単純にいらちなだけじゃなくて、こういう背景があるんだなと思うだけで相手に対して受容性が高まるんです。
家族とか、そういうものじゃないですか。みんなのキャラクターがわかっているから、どんな変なことがあっても別れない、みたいな感じで、どんどん一人ひとりに対する受容が高まって、おのずとその人の特性になってくるんですよね。そういう特性って普段はなかなか出しづらいと思うんですが、セルフマネジメントのプログラムはそういう特性をひき出すきっかけとしてわかりやすかったですね。
チームのパフォーマンスもクライアント満足度も向上
稲墻:その人たちがいがみ合わなくなったことで、なにか変わりましたか?また、Transformのプログラムを受講した結果、どのようなビジネスインパクトがあったでしょうか?
吉岡:チームビルディングをするときに、この人とこの人は合わないとかっていうのがなくなってきていますね。相性をあまり考えずにいろんな人といろんなチームを組んでいますし、いろんなチームを組むことによって成長になると思ってあえてそうしているところもあります。
あと、プロジェクトが潤滑に進むようになりましたね。連携しやすくなって、プロジェクトとしても成功に向かいやすくなりました。
うちはクライアントさんと継続してコンサルティングをさせてもらうんですけど、それがずっと継続しているっていうのがあって。やっぱり継続している理由はいかにクライアントのことを考えているかなんですけど、それはチーム内のメンバー同士が話し合えているかどうかで、その話し合いが増えて深くなった、という感じはしていますね。
だから、社内会議とかすごく細かいし、多いんですけど、そういうものが心理的に嫌じゃなくなったので、結果コミュニケーションが深まって、クライアントさんの満足度に繋がっていると感じています。
社員に継続して活躍してもらうために
稲墻:最後に、Transformのプログラムを、どのような会社におすすめしたいですか。
吉岡:会社のメンバーと長期的に付き合いたい人にはすごくおすすめしたいです。長く付き合っていくために、セルフマネジメントはその人自身にとっても大事だし、チームにとってもすごく大きな影響を与えると思います。
やっぱり相手とわかり合うことがマネジメントなんだなと。相手をわかって、こっちもわかってもらうことがマネジメントなんだなと気づけたので、結果としてセルフマネジメントのおかげでマネジメントへの信頼が生まれ、組織がまとまってきていますね。
吉岡さん、インタビューへのご協力ありがとうございました。
現在お申し込み受付中のプログラムはこちらのページからご覧いただけます。
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