参加者インタビュー:戦略的に休むことで「常にいいところにいられる自分」になれた
「Transformのプログラムに参加して、どんな新たな選択肢がうまれたのか?どんな変化が起きたのか?」は人によって違います。そして、「自分で新たな選択肢を生み出せるようになる、結果を変えられるようになる」と言っても、イメージがわかないというご意見も頂きます。
そんな疑問にお応えするために、プログラム参加者のリアルな体験や変化をインタビュー形式でご紹介します。
シリーズ第2弾は、戦略的に休むことで「常にいいところにいられる自分」になれたという大手自動車メーカー勤務Yさんのストーリーをご紹介します。
戦略的に休むことで「常にいいところにいられる自分」になれた
Yさん
大手自動車メーカー勤務
受講を決めたとき、あなたの人生にはどんなことが起こっていましたか? どのような期待を持ってこのプログラムに参加し、どのような変化がありましたか?
自分自身が変化した実感があります。
このプログラムに参加する以前、2018年に、デザイン思考のプログラムを受講してイナさん(Transform共同創業者/パートナー:稲墻聡一郎)にお会いしました。その時に初めてデザイン思考について体系的に学びました。それまではロジカルシンキングを学んで実践はしていたのですが、何か限界を感じていたところでした。ロジカルシンキングって、今までの大量生産、大量消費のビジネスモデルの中で物事を進めるときには効率化や無駄なく進めるという観点から効果があると思っていて。けれども、今社会が大きく変化しているなかで、お客様が求めているものにも色々な広がりがある。その変化の中で、V U C Aの時代であるからこそアジャイルで物事を考えて早く回す必要があるから、デザイン思考のプログラムは良いだろうと思って参加しました。
インサイトや顧客中心などの考え方について、なるほどな…と思いつつ、いざインタビューを多くの人にやってみると、結果はいかようにもなってしまうことに気づきました。というのも、自分の考えている方向(仮説)に相手を向かせてしまおうとすると、インタビューの軸がブレてしまう。インタビュアーとして相手の生の声を聞いているはずなのに、客観的に聞くというよりも主観的に聞いてしまったりするんですね。
自分は常にグリーンゾーンにいつつ、その中でいかにインタビュイーのインサイトを導いていくかが大事だし、そのスキルを身に付けたいと感じていた時に、このセルフマネジメントのプログラムを思い出しました。
実際にプログラムに参加して、深呼吸などを通して自分の中にスペースを作っていくことを実践しました。それは今でもやり続けています。何気なく生活していても波はあるものですが、自分の中にスペースをつくることを実践していると「常にいいところにいられる自分」になれて、精神的にも安定するし、発想も湧いてきます。かつ、あまり頑張らなくても良い感じ。タイミング的にもちょうどテレワークで余裕ができた中で、考える時間も取れているし、そこにセルフマネジメントのプログラムに参加できたことが拍車をかけたように思います。ぜひうちの社員にもお勧めしたいです。
もしコースを受講していなかったら、あなたの人生はどうなっていたと思いますか?
会社に入社したのが1992年なのですが、その時は車が売れていました。特に軽自動車が売れていて。私は横浜にある研究所に配属になったのですが、そこでは一つの車種を開発するというような、他部門の影響があまりない、自分で新しいものを企画立案できた部署でした。その中で、私は実は一回辞表を出しているんです。結婚の条件として、妻にのんびりしたところに住みたいと言われて。私の実家は九州で、造り酒屋の跡取りなんですが、今はAという自動車メーカー(A社と表記)で研究職をやっているけれども、いずれは帰るのかな…となんとなく思っていました。ですからこのタイミングは何か良いキッカケなのかなと思い、結婚の報告と一緒に上司に辞めるって伝えたのですが、そこで反対されたんです。
その人はA社以外の環境も知っている人だったのですが、今までの部下に同じように会社を辞めた人がたくさんいて、辞めた後に後悔している人が多いと言われました。世のため、人のために何か成し遂げたという体験がない中で実家に戻ると、達成感がない中で戻ることになるし、外の世界を中途半端にしか知らないで戻ることになる。そうじゃなくて、「5年のうちに何か成果を出したら、辞めて良い」と言われました。
そこで奮発して、5年で実績を出すためにガムシャラに仕事した結果、A社の全機種に搭載される新技術を企画・開発して実績が出たんです。今になって思い返すと上司の作戦勝ちなのかもしれませんが、その頃には仕事が楽しくなっていて実家に戻るなんて考えられなくなっていたところに、弟が実家を継いでくれることになったんです。
自分ごととして仕事に取り組んで、必死になって目的達成するために物事に取り組むと、実現するし、周りはついてきてくれる。賛同してくれる。皆が応援してくれる。そこにはストーリーがあるし、志というか、熱意で変わるんだなと感じました。
けれども、それ以降はなんだか間違った方向に進んだ感じがあったんです。やればやるだけ思い通りになるのかなっていうと、やっぱりちょっと違うなあ…と。消耗するし、自分の理想をどんどん高くすればするほど相手に対しても卑屈というか、否定的なことを言ったり、厳しくなったりしていました。その後管理職になり、今研究所で柱となっている自動運転・燃料電池・高効率エンジンなどのチームのマネジメントで100人以上の部下を持ったこともありました。そうなると、とにかく仕事をこなすのが精一杯で自分の周りが見えなくなるんですよ。決裁だけで一日が終わってしまう。
その後、東京の経営企画に行ったあとに、オープンイノベーションの推進役ということで横浜に戻ってきた。今までの管理業務からイノベーションを生み出す仕事への転換は、既存概念を払拭していかに新たな考え方をするかが必要になると感じました。「自分を追い込む」、「わざと自分を忙しい中に放り込んで鼓舞する」やり方から脱却しないと、これからの仕事はできないなと思ったんですね。仕事は文字通り今までと真逆でした。会う人も、趣味も会話も違う環境。けれども、そこにワクワクしているし、もっと突き詰めたいなという思いがありました。
なので、デザイン思考だとか、オープンイノベーションを推進するいわゆる「イノベーター」と呼ばれる人に会ったり…。本当に今までの仕事と真逆の人たちとの接点が増えました。
デザイン思考との繋がりでいうと、やっぱり自分自身が安定していないと、他者からのインサイトを深掘りできないし、拾えなくて。自分が安定しておらず、例えば疲れていたり、睡眠不足だったり落ち込んだりしていると、いくら良いインタビューや提案があってもうまくその場を料理できない。せっかく時間と機会をつくってもらっている以上は自分を最高のコンディションにしておきたいなと思い、Transformのセルフマネジメントプログラムに参加しました。もし参加していなかったら、昔のやり方に戻ってしまったと思います。「やっぱりこの仕事は合いません」って(笑)。だから、すごく良かったなと思います。
というのは、若い人は新しいことにチャレンジしたいと思っているし、やりたがっていると思います。そんな中で、相手の立場に立って考えてあげられるようなスペースを持たずに、頭ごなしに「何を言ってるんだ」「もっとこうしろよ」って言っている自分がもしかしたらいたかもしれません。そういう意味では、今の仕事に非常にプラスになっているのかなと思います。
今日もまさに体験したことなのですが、「この人のもともとの意図ってなんだろう?」ってところから逆算していって、IRマップを思い浮かべながら逆算するための情報を得られるように質問をする、そしてその繰り返しによって真意にたどり着くのが習慣になってきました。あ、だからこういうことを言っているのね、とか。質問を投げかけてみると、実は相手は単なる思い付きで言っているわけじゃないことが見えてきたりします。けれども、若さもあって短絡的に判断している部分も見えてくる。そこでさらに問いかけたり、「こんな考え方もあるんじゃないかな?」ってフィードバックしてあげると、「確かにそういう考え方もありますね」って言ってくれたり。そういう意味では、人材育成の面でも頭ごなしに自分の思いを投げつけるんじゃなくて、IRマップを使って気づかせてあげることが非常に有効なのかなと思います。
学んだことを日常生活の中で使ったときのエピソードを教えてください。何が起こりましたか?そして、結果はどうでしたか?
さっきの部下との会話のときのように、何かをする時に自分自身にスペースを持たせてくれる、自分が余白を持てるようになった感覚があります。心理的にも、時間的にも。猛烈に働いていた時は、隙間時間があるとあれもこれもやろうって詰め込んでいました。その時間で何かしよう、と思って。とにかく忙殺されていたし、どんどん仕事を頼まれるので、いつのまにか忙しくするのが普通になっていて。けれども今は、隙間時間があると他のことにエネルギーを向けたり、無の時間を作ったり、しばらく座って考えてみるとか、今までの自分には考えられないような時間の使い方ができるようになりました。こういう隙間の時間、自分を見つめ直す時間は本当に必要だし、判断や意思決定にも影響が出るんです。忙殺された中での判断と、自分の中にスペースがある中での判断って全然変わってくるし、後者の方が前に進む確率が高いかなと思います。そういう意味では日頃判断基準を持ち、仕事を進める面でも役に立っていると思います。
あと、仕事や会話をする時には表情も大事なんだってことにも気づきました。自分が目くじら立ててイライラしていると、相手は思ったことを言ってこないですよね、きっとね。忙しい雰囲気を出していたら、絶対本心では話しかけてこないし。話の背景を説明せず結論だけ言おうとすると逆効果になったりしますしね。仕事でも会話する時でも、相手の背景を聞くことと、自分は穏やかでいることの大切さを、今回のプログラムで知りました。そういう意味では積極的に話を聞く、しかもにこやかに聞く、というのはすごく重要かなと思います。
忙しくてもちょっと一呼吸置いて、人が来たからその人の話を聞こう。それって体を休めるいいきっかけだね、体が疲れていてレッドゾーンに入りそうなのを神様が止めてくれたんだろうな…とか思えるようになりました。そう考えると自分もいい状態になるし、人との接し方も話し方も変わるんです。相手にとっても自分にとっても余裕が持てて、会話が進むのを感じています。そういったところでも活用できているのかなと思いますね。
あとは、今回のセミナーでおもしろかったのは、ブレークアウトルームで「これって自分だけじゃないんだ」と思えたのは嬉しかったですね。自分だけじゃないんだ、みんなも同じような課題を抱えているんだって聞けて安心したり、自分に対して嫌悪感を持たなくなりました。
実は、これまでイラっとする自分や感情がブレる自分がすごく嫌だったんです。でもそれも自然に出てくる感情のひとつだし、自分を責め立てる必要はないんだってことに気づけました。それまでは本当に自分に余裕がなかったんだなあと思えて、そこから好転するようになったっていうのはありますね。このプログラムを通して無理なものは無理って思えるようになったし、根性論ではなく、「スキルを上げるためには努力は必要だけど、疲弊しきった状態で努力するんだったら、一度休んでパフォーマンスを発揮できる状態を作ったほうがはるかに結果を出しやすい」っていうことがわかりました。
あとは、浪人生と高校一年生の子どもたちがいるんですけど、彼らに対してあまり口出しをしなくなりました。今までは自分の成功体験じゃないですけど、「自分はこうやってうまくやってきたから、お前もこれをやればうまくいく」って押しつけるスタンスで、うまくいかないことが多くて。けれども、そのスタンスを変えるやり方もわかりませんでした。
それが今は「結局やるのは本人だし、本人も考えて生活している。時代も変わってきているし、何が正解かわからない時代になっている。だから細かいことに口は出さずに、本当に困っているのならアドバイスはするけど、方針を示すくらいがいいのかな」と思えるようになりました。自分の時はどうだったかな…と振り返ると、根掘り葉掘り聞かれるとウザいなって思っていましたし、「そりゃそうだよな、逆効果のことをしてきたな」ってことに気づけました(笑)。
でも幼くて可愛かった時の子どものイメージが強く残っているから、「なんで自分に相談してくれないの?」、「何で聞きにきてくれないの?」っていうもどかしさもあるんです。そこで、「あ、自分が子離れできていないんだな」ってことにも気づけました。可愛かったときの体験に固執している自分がいて。その関係はとっくに変わっているのに、自分がついていけていない。そこにハッと気づいて、今努力しているところです。10年くらい前にこのプログラムを受けたかったなって思っています(笑)。
―了―
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