
【イベントレポート】グリーンゾーン戦略で再生するリーダーシップと学びの環境
静かな問いから始まる時間
2026年1月12日(月・祝)、冬の澄んだ空気に包まれた軽井沢風越学園にて、特別セッション「グリーンゾーン戦略で再生するリーダーシップと学びの環境」が開催されました。
ファシリテーターを務めたのは、Transform共同経営者/パートナーであり、ピーター・F・ドラッカー・スクール教授の ジェレミー・ハンター。
この時間の中心にあったのは、スキルやノウハウではなく、ひとつの静かな問いでした。
私たちは、どんな状態で人と関わり、学び、未来をつくろうとしているのか。
理念や制度の前に、人の「状態」に目を向けること。
本セッションは、人の神経系という生理的な土台から、リーダーシップや学びの環境を見つめ直す試みでした。

「頭の中のネクタイを外す」ことから
浅間山を望む校舎に集まったのは、教育者、経営者、保護者など、立場も背景も異なる参加者たち。
ジェレミーの「頭の中のネクタイを外してください」という言葉とともに、場の空気は少しずつ変わっていきました。
ここで扱われるのは、正解を見つけるための知識ではありません。
自分の内側で今、何が起きているのか。
その反応をどう扱うのか。
この時間は、人が人として躍動するための、実践的なツールに触れていく旅でもありました。

神経システムから状態や場をとらえなおす
セッションの土台となったのは、Transformプログラムの軸となる「神経システム」。自分の状態を3つのゾーンで表します。
- グリーンゾーン
安心やつながりを感じ、思考が柔軟で、創造性が自然と立ち上がる状態。学びと協働の土台となる。 - レッドゾーン
慢性的な緊張や防衛反応が優位な状態。生存が最優先となり、外の世界が脅威となる。探究や協働は起こりにくい。 - ブラックゾーン
エネルギーが枯渇し、無気力や疲弊に陥っている状態。探究や共同が起きるエネルギーがない状態。
ジェレミーが繰り返し語ったのは、
「理念や仕組みがどれほど優れていても、人がレッドゾーンにいれば、無意識のうちに価値を壊してしまう」
という現実でした。
善意や正しさに基づいた行動が、結果として創造性や関係性を狭めてしまうことがある。
そのズレは、意図ではなく「状態」から生まれている、と。
自分の反応を地図にする
セッションは、講義とワーク、対話を行き来しながら進みました。
印象的だったのが、リアクティビティ・マップのワークです。
過去の「後悔した瞬間」を思い出し、
身体にどんな反応が起きるか
頭の中でどんなストーリーが流れるか
それらの反応やストーリーがどうつながっていくかを一つの地図として書き出していきました。
目的は反省ではなく、無意識の反応パターンに気づき、違う選択肢を作るための準備です。
写真を通して「好き・嫌い(快・不快)」に気づくエクササイズでは、私たちがどれほど過去の経験を通して、今の現実を分類し、意味づけているかが浮かび上がってきました。

答えのない状態に留まるという実践
後半には、風越学園スタッフを交えた鼎談も行われました。
「子どもも大人も、つくり手である」という理念を、どう日常の実践として支えていくのか。
そこで語られたのは、答えのない、複雑な状態に留まる力でした。
不確実さを消そうとするのではなく、その中に居続けられる状態を育てること。
そのために、神経系の安定がどれほど重要かが共有されていきました。
「戻る力」を持つということ
参加者からは、自身のゾーンに関する率直な気づきが語られました。
自分がブラックゾーンにいることに気づいていなかったこと。
今どのゾーンにいるのかを知るための「ダッシュボード」が必要だという実感。
また、
「レッドゾーンで子どもを怒鳴ることは、望む未来から自分を遠ざけている」
という言葉に、深く頷く場面もありました。
ここで強調されたのは、レッドゾーンに入らないことではなく、いかに早くグリーンに戻れるか。
完璧である必要はない。
戻る力を持つことが大切なのだ、という視点でした。

リーダーシップは「あり方」のマネジメント
セッションの終盤、ジェレミーは、日本が持つ「調和」や「安定」というソフトパワーへの期待を語りました。
それは大きな改革や制度からではなく、自分自身の神経系の状態に気づき、整えることから始まります。
半年かけて自分のパターンを観察し続けるという宿題とともに、参加者はそれぞれの日常へと戻っていきました。
この3時間が静かに伝えていたのは、リーダーシップとは手法ではなく、自分自身のあり方(Being)をどうマネジメントするかなのだということでした。
あらためて、ご参加くださった皆さま、そして風越学園の皆さまありがとうございました。
★Transformが大切にしている「グリーンゾーン戦略」については、さまざまなイベントやプログラムを通してご提供しています。詳しくはブログをご覧ください。